金属3Dプリンターの原理と仕組み、製法と種類を一挙公開

注目が集まる金属用の3Dプリンター
2014年に特許が満了となり、注目が集まるレーザー焼結法。SLS(Selective laser sintering)ともいわれるこの技術は、一般的に金属材料の3Dプリンターの製法として知られている。

金属の3Dプリンターが注目されている理由の第一は、特許満了ともなれば、その技術を利用し、安価な廉価版などの開発が進むためだ。既に、プラスチックの3Dプリンターとして主力である熱溶解積層法(FDM、2009年に満了)や、光造形(SLADLP、2006年に満了)が、特許満了しており、それに伴って低価格なデスクトップモデルの開発が進んでいる。

これと同じ現象が、レーザー焼結法と呼ばれるナイロンパウダーや金属粉末を使ったSLSの3Dプリンターにも起こるとされている。

既に、何社かはレーザー焼結法の技術を利用した廉価版の3Dプリンターの開発に成功しているが、実際の口コミや評判などは海外メーカーであることから中々伝わっておらず、流通もそこまでしているわけではない。しかし、安価な金属3Dプリンターが利用できるようになれば、プラスチックと同様、金属材料によるものづくりのハードルが一気に下がると予測されている。

とはいえ、一言で、金属用3Dプリンターといっても、その製法は様々であり、一般的に知られるレーザー焼結法(通称SLS)以外にも様々な製法が存在している。特許の失効により開発のハードルが低下するのはともかく、デジタルデータからダイレクトに製造することができる技術は、これからのクラウドを中心としたものづくりにおいては、大きな影響を与えることは間違いない。

そのため、本項では、「金属3Dプリンターの原理と仕組み」ということで、多様な金属用3Dプリンターの種類についてご紹介したいと思う。そこには人類の歴史上において重要な役割を果たしてきた金属加工を更に進化させ拡大する取り組みがうかがうことができる。

金属加工の幅を広げるテクノロジー
金属はプラスチックと同様、あらゆる種類が存在し、同時に加工方法も多岐にわたっている。叩いて加工する鍛造や、溶かして型に流し込む鋳造、熱を加えて接合する溶接や、刃物で削り取る切削など、金属加工の幅は驚くほど広い。

また金属加工は、数ある製造技術の中においても、最も古い加工技術であると同時に、人類の進歩とともに進化してきた最先端の加工技術である。

例えば鋳造などは、古代の仏像や装飾具を作るために利用されていたが、現代でも航空宇宙産業などでは主力の加工技術である。こうした金属加工のほとんどが数千年の歴史を持つ中において、3Dプリント技術は比較的新しい造形技術に分類されるといえるだろう。

基本的に”3Dプリント“というと、印刷という印象を受けるが、端的に表現するとすれば、”物体を積層することで形にする技術“と言い換えることができる。金属用の3Dプリント技術も、さまざまな形状(粉末や液体など)の金属材料を設計データの通りに積み上げて形にしていく。

現在では、プロトタイプの製造や、小ロットパーツの生産などに利用が開始されているが、この技術の革新的な点は、モノ、製品に関わるあらゆる面に影響を及ぼすが、プロダクトを作る製造者、メーカーと、その製品を手に取り使用するユーザー、双方において大きなメリットをもたらすことになる。

生産者の側にとっては、量産用の設備に比べ、はるかに低コストで物体を作ることができ、同時に、細かいユーザーニーズに対応しやすくなる。

一方、ユーザーは、自らに最適化された製品にカスタマイズできることで、より製品を通じて豊かに暮らせるようになる。また、デジタル技術を核にすることから、サプライチェーンを変革し、これまで発生していたコストを大幅に減らすことになるのである。

これが一般的な3Dプリント技術の影響ではあるが、こと金属3Dプリンターに関していえば、先にご紹介した、古くから存在する様々な金属加工技術との使い分けにより、更なる価値を拡大することが可能になる。

実は豊富な種類を誇る金属用3Dプリンター
金属の3Dプリンターは、このSLS、レーザー焼結法以外にも、多数の造形技術が存在する。金属3Dプリンターの仕組みは、基本的には粉末状の金属を使ったパウダーベッド(金属パウダーにレーザーやビームを当てて固める方法。

日本語訳だと粉末床溶融結合といったわかりにくい名称になる)がベースだが、レーザー焼結法以外にも様々な種類の製法が存在する。また最近ではこのパウダーベッド以外の方法も登場してきている。ここでは、SLSレーザー焼結法も含めた金属3Dプリンターの種類や、原理と仕組み、特長や用途、材料についてご紹介しよう。

レーザー焼結法:Selective laser sintering(SLS)
Selective laser sintering(SLS)、レーザー焼結法は金属3Dプリンターの中では最も有名で、パウダーベッド(粉末床溶融結合)製法でも最も知られている製法の一つである。基本的な製法は、粉末状の金属材料にレーザービームを照射して、焼結して物体にする。お次にご紹介するdirect metal laser sintering (DMLS)と造形へのアプローチは一緒だが、レーザー焼結法(SLS)と技術的な部分が異なる。

レーザー焼結法(SLS)の歴史 開発から3Dsystems買収
レーザー焼結法(SLS)は、アメリカの発明家であるカール・R.デッカード博士によって開発された。博士はテキサス大学オースティン校に在学中、このアイデアを思いつき、修士課程、博士課程の期間、試行錯誤を行い実際の部品を製造することまで成し遂げている。

その後、博士は、テキサス大学オースティン校からこの技術のライセンス供与を受け、Desk Top Manufacturing (DTM) Corpを設立。レーザー焼結法(SLS)の3Dプリンターのメーカーにまで成長させることに成功した。このDTM社は、2001年に4500万ドルで3Dsystems社に買収され、現在同社の金属造形マシーンProXシリーズに技術が活かされている。

レーザー焼結法(SLS)の原理と仕組み
レーザー焼結法(SLS)の原理は、粉末状の素材(金属、ナイロン、セラミックなど)にレーザーを照射して焼結させる方法である。高電力のレーザーが使用され、物体の形状に従って一層ずつ造形していく。

もともとレーザーは、工業用に切断や溶接で用いられていたが、固体粉末の融点よりも低い温度でレーザーを照射すると固まって焼結体と呼ばれる緻密な物体になる。レーザー焼結法はこの金属の物質としての特性を利用して作られた技術であり、量産加工ではないオンデマンドの製造技術として期待される。

金型や鋳造での成型方法は、熱可塑性樹脂や金属を完全に溶かした後、型に入れて冷却し固形化するが、焼結の場合は融点よりも低い温度であるため、物体は完全には液体状にならない。

従来からの形状を保ちながら物体として融合、一体化することができる仕組みである。焼結によって作り出される物体は、密度や強度は大きくなる特性がある。

レーザー焼結法(SLS)の仕組みは、造形ステージに粉末材料を敷き詰めてそこにレーザービームを照射する。一般的には粉末供給部が左右にあり、ローラーで粉末を供給しながら造形していく。1層分の造形が終わると、造形ステージが1段下がり次の層の造形を開始する。基本的に粉末状の材料の中で造形されるため、そのほかの3Dプリンターで当たり前のサポート材は不要となる。

レーザー焼結法(SLS)の特長とメリット
レーザー焼結法(SLS)の最大の特長は、材料によっては最大100%の密度で、従来の物質本来が持つ材質と同等に近い材料特性を実現することができる。

より端的に言えば、最終品として使用することができるレベルの造形が可能であるということになる。例えば金属ではないが同じくレーザー焼結法(SLS)に対応しているプラスチック材料、ナイロンポリアミドでは、ナイロン本来が持つ強度や、柔軟性、靭性といった特性を実現することができる。

こうした材料特性の再現性は大きく、最終品の製造マシーンとしても利用が可能になる。従来の伝統的なものづくりの手法、射出成型や鋳造、鍛造などでは、量産を想定しているため巨大な設備と初期投資が大きく、形状の修正や変化にも多額のコストが必要であったが、レーザー焼結法(SLS)であれば、プロトタイプだけではなく最終品の製造用途としても利用することができる。

近年、特許失効とともにレーザー焼結法(SLS)が急速に注目されている理由はこの点にあるといえるだろう。

レーザー焼結法(SLS)の短所
一方、レーザー焼結法(SLS)の3Dプリンターは、装置そのものが高額であり、簡単に導入することが難しい。特許満了によって、安価な廉価版が期待されているのも、マシーンそのものの導入が大掛かりで、高額なためだ。また短所としては、表面の仕上がりがパウダー粒子のざらざら感があり、滑らかな質感を表現する事が難しい。

レーザー焼結法(SLS)の材料
レーザー焼結法(SLS)の材料は、基本的に単一ではなく、一般的にコーティングされた粉末素材を使用する(原理が同じDMLSは単一素材)。この混合粉末材料はボールミルによって粉砕され、混合されて作り出される。

ボールミルとは円筒形の筒に材料を入れて回転させながら、材料をすりつぶして微細な粉末を作る装置のこと。レーザー焼結法(SLS)では、金属粉末では鉄、チタン、銅、その他の合金、プラスチック粉末ではガラス繊維やその他の充填剤が配合されたナイロン、さらにセラミックやグリーンサンドなどにも対応している。

レーザー焼結法(SLS)の代表的な3Dプリンター
レーザー焼結法(SLS)の3Dプリンターで代表的な存在は、何社か存在しており、基本的にドイツとアメリカのメーカーが中心である。また、2014年に特許満了を迎え、廉価版メーカーも少しずつ登場してきている。ここでは、代表的なレーザー焼結法(SLS)のメーカーをご紹介しよう。

EOS:世界最大の金属3Dプリンターメーカー
お次にご紹介する金属3Dプリンターの技術であるDMLSとともに有名なのが、ドイツのメーカーEOSである。EOSは、レーザー焼結法(SLS)と、DMLS直接金属レーザー焼結で世界一の市場シェアを誇っている。

EOSは、もともと光造形(SLA)のメーカーとしてスタートしたが、早くからレーザー焼結法のライセンスを取得し、独自開発を行ってきた。1997年に光造形(SLA)の事業を3Dsystemsに売却後、レーザー焼結法(SLS)に特化し、高出力のイッテルビウムファイバーを使用するレーザー焼結法、(DMLS:直接金属レーザー焼結)のマシーンの製造開発であらゆる金属素材のデジタル製造に成功している。

また、近年では、のちにご紹介するSelective laser melting(通称SLM、レーザー溶融法)の技術開発に力を注いでいる。

-----------------------------------------------------------------

skysmotor.comCNCステッピングモーターBLDCモーターなどを販売している専門的なオンラインサプライヤーです。お客様に競争力のある価格、または効率的なサービスを提供しております。