3Dプリンター本体を使用するためには、まずいくつかの工程を踏まなければいけません。上述したように、実際の“モノ”を形成するには設計図を引き、それをデータとして3Dプリンターに送らなければいけません。以下は3Dプリンターで造形物や製品を形成するまでの流れと、それ以降を示したものです。まずは大枠の流れを掴むようにしましょう。
3DCADでデータ(設計図)を作成
STLデータへの出力チェック・データ変換
スライスソフトを用いて造形ツールパスデータへ変換
3Dプリント(造形)
副材の除去
仕上げ
3DCADでデータ(設計図)を作成
上述したように、自身の思い描く造形物を3Dで再現させるには、設計図、すなわち3Dデータが必要になります。3Dデータを作成する方法は「3DCADソフトを利用してモデリング」「2DCADのデータを3Dに変換」「3Dスキャナを用いて現物から3Dデータを抽出」といった3つに分かれており、方法によって特徴や労力の程度は様々です。
3DCADソフトを利用してモデリングする方法では、どんな造形物でも自由に設計できるというメリットがあります。ただ一方で3DCADソフトそのものの操作を覚えなくてはいけないため、最初はなかなか作業が前に進まないかもしれません。ただ慣れてしまえば、自由度が一気に上がるため、時間に余裕がある人は覚えてしまったほうがよいでしょう。
2DCADのデータを3Dに変換する方法は、製造現場でよく用いられる方法です。そのため、3D化させるための元データは、容易に手配できるでしょう。しかし、元データによってはうまく3Dの形状を再現できない場合もあります。元データの入手が簡単な分、ある程度完成してからの修正に時間がかかると考えてよいでしょう。
3Dスキャナを用いて現物から3Dデータを抽出する方法は、世に出ていないものや2Dのデータすら残っていないレアな製品に対して用いられます。もし昔の製品を復元させたい場合は、有効でしょう。
ただスキャンの精度に寄ってしまうことがあり、スキャンする機器によっては正確な寸法まで再現することは難しい場合もあります。またデータ作成中にノイズが混じってしまうことも少なくありません。結果として3Dデータを取り込んだ後に細かい修正が必要となります。
ちなみに3DCADではなく、3DCGソフトでも3Dモデリングは可能です。
ただ3DCGソフトは、基本的にアニメーションの作成、キャラクターの作成が目的のソフトであるため、構造が整合しきれてない3Dモデルが形成されてしまう可能性があります。もし建物や施設といった構造の整合が必須な造形物を手掛ける場合は3DCADを利用しましょう。
STLデータへの出力・チェック
3Dデータを作成した後に行うのはSTデータへの出力とチェックです。基本的に作成された3Dデータは、それぞれのソフトが採用する形式で保存されます。しかし一般的な3Dプリンターで扱えるようにするためには、『STL形式』と呼ばれる形式に変換する必要があるのです。
そもそもSTL形式のSTLとは「Stereolithography」の略称で、3CADソフト用のファイルフォーマットの1つです。この形式に変換することで、3Dデータとして描いた立体の形状が極々小さな三角形で構成されるようになり、曲面の滑らかさを表現可能となります。
そのため、非常に汎用性の高い形式なのです。変換用のソフトもありますが、今はほとんどの3DCADソフトにSTLデータ出力のサポート機能が搭載されているので、そちらを使用しても問題ないはずです。
ただ一方で、STL形式は整合性のないデータも立体形状に生成してしまうというリスクを抱えています。もし整合性のないデータが存在してしまうと、3Dプリンター本体でいざ造形しようとしても、正しく立体物を造形することができません。
そこで行うのが、出力されたSTLデータの整合性事前チェックです。チェックツールの種類は豊富で、もともとスライスソフト内に組み込まれているものもありますが、もし精度を高めたいのであれば有料のチェックツールを使用した方が良いでしょう。中にはチェックで判明したエラーを自動で補正してくれるものもあるため、良く選んで取り入れてください。
スライスソフトを用いて造形ツールパスデータへ変換
3DデータをSTL形式のデータに変換し、そしてSTLデータの整合性がチェックできた後は、実際に3Dプリンターに出力するためのデータに変換します。ここで3Dプリンター用のデータに変換出来て、初めて正確な造形が可能になるのです。
3Dプリンターにはさまざまな出力方式がありますが、基本的に用いられているのは「スライスソフトを用いて造形ツールパスデータへ変換する」といった方式です。ただ3Dプリンターによって造形ツールパスデータの形式が異なるため、スライスソフトはその3Dプリンターに合ったものでないといけません。
そのため、3Dプリンターを購入するときに専用のスライスソフトも購入するか、専用のスライスソフトがついてくる3Dプリンターを用意するようにしましょう。
3Dプリント(造形)
STLデータを造形ツールパスデータに変換できたら、いよいよ造形の工程に移ります。まずは、造形ツールパスデータを3Dプリンターに読み込ませるのですが、方法は主に2パターンあります。
1つは、3DプリンターとPCを接続し専用のソフトを起動させて行う方法、もう1つは造形ツールパスデータをUSBメモリに保存し、それを3Dプリンターに直接つないで読み込ませて、3Dプリンター本体から造形する方法です。
もし細部にこだわった設定や制御を行いたい場合は、PCと3Dプリンターを直接つないだ方法で行う方が良いでしょう。ただまた3Dプリンターによっては条件に細かな違いがあるため、どちらの方法で造形を行うかは、3Dプリンターを選ぶときまでに決めておくべきです。
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副材の除去
3Dプリンターによって造られた造形物には、ほぼすべてに形状を保持するための副材が付着しているはずです。したがって、造形後はこの副材を除去する作業を行います。
副材の除去方法は主に2つあります。1つ目は、素手もしくは工具を用いて物理的に副材を造形物から剥離する方法です。この方法のメリットは、誰でも可能であることと、特別な知識や設備が必要ないため、安価に行えるという点です。しかし、複雑な造形物になるほど剥離しにくくなり、副材が残ってしまう可能性もあります。最悪の場合、造形物まで破損させてしまうかもしれません。
2つ目は、副材を溶かす専用の液を用いて溶解しつつ剥離する方法です。素手や工具ではなかなか届かない部分に付着した副材も容易に除去できますし、衝撃による造形物破損の心配も必要ありません。
しかし、普段見ない特殊な溶液を使うため、用いる場合は専門的な知識と設備が必要です。どちらの方法を選ぶにしてもメリット・デメリットはつきものなので、造形物の構造や設備環境などを踏まえたうえで除去方法を選びましょう。
仕上げ加工
造形物によって異なりますが、造形物に最終処理として仕上げ加工を施すと、より美しい造形物になる可能性があります。とくに凹凸をはっきり見せたいときや、滑らかな仕上がりにしたい箇所などは研磨を行なった方が完成度の高い造形物になるはずです。
どこまでこだわりを見せるかは人それぞれではありますが、せっかく造ったのですから、とことんこだわり抜いたものにしたほうが達成度は高いでしょう。
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