ステッピングモータドライバを使ったトルク制御の実践方法

ステッピングモータは、位置決め制御(ステップ制御)が得意なモータとして知られていますが、用途によってはトルクの制御が重要になる場面もあります。たとえば、一定の押しつけ力を維持したい装置や、過負荷を回避したい機構においては、モータの出力トルクを適切に制御することが必要です。

本稿では、ステッピングモータにおけるトルク制御の基本概念と、ステッピングモータドライバを活用した実践的な制御方法についてわかりやすく解説いたします。

1. ステッピングモータにおけるトルクの基本
ステッピングモータのトルク(回転力)は、主に以下の2点によって決まります:

通電中の電流量(駆動電流)

ステータコイルのインピーダンス特性(周波数依存)

一般的に、駆動電流が大きいほどトルクは増加しますが、加熱やエネルギー損失も大きくなるため、必要なトルクに応じて適正な電流値を設定することが重要です。

 

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「写真の由来:Leadshine デジタルステッピングドライバ DM870 20-80VDC 0.5-7.0A (Nema 23、24、34 ステップモーターに適合)

 

2. トルク制御が求められる代表的な場面
押し付け制御(例:包装機のフィルム巻取り)

過負荷保護(例:物体が挟まれたときの停止)

圧力や張力の安定化(例:紙送りやワイヤ引張)

ソフトリミットの実現(例:端部到達時の力制限)

このようなケースでは、モータの出力トルク=コイル電流の制御として扱うことができます。

3. ステッピングモータドライバによるトルク制御の実践方法
● 方法①:定電流制御による「疑似トルク制御」
多くのステッピングモータドライバには、**電流設定スイッチまたはパラメータ(電流値設定)**があります。この設定値により、通電時のコイル電流が決まり、トルクが間接的に制御されます。

実践手順:
使用するステッピングモータの定格電流と最大トルク特性を確認

ドライバ側の電流設定(例:DIPスイッチやソフト設定)を任意の電流値に設定

テスト運転を行い、負荷に対して脱調せず、かつ必要以上のトルクを出さない電流値を選定

※注意:この方法は静的なトルク設定には有効ですが、動的なリアルタイムトルク制御には向いていません。

 

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「写真の由来:デジタルステッピングドライバ DM2282T 180-240VAC 0.5-8.2A Nema 34,42 モーターと互換性があります

 

● 方法②:電流可変型ドライバによるソフト制御
一部の高機能ドライバ(例:RS-485制御、CAN通信対応など)では、外部から電流値をリアルタイムに変更可能です。これにより、負荷条件に応じてトルクを動的に調整する制御が可能です。

具体的な制御例:
スタート時は高トルク(高電流)、減速時は低トルク(低電流)

センサ値(押し込み量、接触圧)に応じて電流を制御

衝突時のトルクリミット(トルク制限)機能として活用

必要な構成:
ソフトウェア制御可能なステッピングドライバ

上位コントローラ(PLC、マイコン、PCなど)からの指令インタフェース

実トルクを反映する電流制御ロジック

● 方法③:疑似サーボ的制御(クローズドループステッピング)
近年ではエンコーダ付きステッピングモータ+トルク補償付きドライバの組み合わせにより、サーボモータに近いトルク制御が可能な「クローズドループステッピングシステム」が登場しています。

トルク変動に応じて自動的に電流を補正し、安定した動作と過負荷検出が可能

リアルタイムにトルク値をモニタリングする機能を備えた製品もあります

4. トルク制御時の注意点
項目    内容
熱対策    高電流を流し続けると、モータ・ドライバの発熱が増大します。冷却設計(ファン、ヒートシンク)を検討しましょう。
負荷慣性の確認    トルク不足で脱調しないよう、起動・停止の加速度に注意してトルクマージンを設計します。
トルクリミットの設定    ソフトウェアや外部回路で電流制限機能を活用することで、異常時の安全対策が可能です。
定格電流の遵守    モータの定格以上の電流は寿命低下や焼損の原因となるため、必ず定格内で設定してください。

ステッピングモータでも、ステッピングモータドライバの電流設定やソフト制御を駆使することで、トルク制御は十分に実現可能です。とくに押し付け機構や力制御が必要な場面では、「回転角制御+電流制御=位置&トルクの両立」という観点から設計を行うと、より柔軟な動作が実現できます。